より良いサービスを産み出す
平成29年4月1日 院長 濵副 隆一
春になって野山の草木が一斉に芽吹くたたずまいを「山笑う」と言いますが、芽吹いたばかりの若葉の色が日増しに深くなっていく姿に、生命の輝きを感じます。
年度替わりには人事異動がつきもので、今年は、退職または転出の職員が40名(うち定年退職者は4名)、転入と新規採用が合わせて57名(いずれにも非常勤を含む)に及び、人数としては結構大幅な動きになりました。定年制度は世代交代には役立っても、今なお活躍している優秀な職員を失うことになり、残念な面もあります。当院のような中小病院では、いずれの部署も全員野球で任務に当たる必要がありますので、新入職された皆さんには、業務の流れや職場の雰囲気に早く慣れて頂き、活躍いただくよう期待しています。
さて、2025年に団塊世代の700万人が75歳以上になると、高齢者への医療費が大幅に増加するだけでなく、社会保障費の増加も加わって、財政負担が急増します。このため、年金の支給開始年齢が65歳まで段階的に引き上げられ、年金の給付額自体も大幅に引き下げられました。医療費削減については、施策の中心は「地域医療構想」にあり、病院機能の分化を推進して地域医療の効率化を図り、2025年までに医療需要に見合うよう入院病床数を調整することになっています。しかし、経営主体の異なる病院が機能競合する状況では、経営の機微が絡むために、医療機能の分化はおろか、緻密な連携も侭なりません。都道府県には医療費適正化計画の枠がはめられていますので、いずれは都道府県が主導する形で病院の再編・統合が進められ、医療費を抑えながらも、質の高い・効率的な医療提供体制が築かれていくのではないかと思われます。
一方、平成29年度は、平成30年度から始まる第7次医療計画と介護保険事業計画の基本方針が取り纏められる年に当たり、「医療と介護の一体改革」が本格的に進められてきます。地域医療を担う私たちは、地域医療構想や病床機能報告のデータから地域医療の将来像を先読みするにしても、これからの数年は増え続ける高齢者の急性期医療にもしっかり応えていくのが務めです。急性期病院の治療能力は、「重症度、医療・看護必要度」の患者割合と「病床利用率」の高さによって推し量ることができます。しかし、「必要度」の割合を高めようとすれば、「平均在院日数」が自ずと短縮されて「病床利用率」が低下し、入院収益の減少を招きます。したがって、急性期病院として事業を続けていくのであれば、医療密度の高い患者さんに数多く入院して頂き、「必要度」と同時に「病床利用率」を高く維持することが求められます。患者さん方の医療サービスへの期待は多種多様ですが、病院を選ぶ際の基準は「医療の質」と「患者満足度」の2つが重要な要素になります。そこで、平成29年度の病院目標を『より良いサービスを産み出す』とし、多職種が部門を越えて連携し、「医療の質」と「患者満足度」というサービス価値を高めていくことにしました。行動目標には、1)患者ニーズの掘り起こし、2)働きやすい職場環境づくり、3)新たな視点で業務の効率化、4)費用削減に努め収支改善、の4つを掲げ、病院全体で取り組んで参る所存です。
最後に、「地域医療研修センターならびに地域ケア推進室」の増築計画ですが、今年の4月中旬に着工し、12月末に完成する予定で進められることになりました。病院建物の東側敷地での工事ですので、通常の外来通院や入院診療には支障はありませんが、ご協力をお願いすることがあるかと思います。
医師会ならびに関係の皆様方には、今年度も温かいご支援とご指導を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。