独立行政法人国立病院機構 米子医療センター 病院長 久留 一郎
新年あけましておめでとうございます。皆様お健やかに新しい年を迎えられたこととお慶び申し上げます。今年は 巳年 です。脱皮し強く成長する蛇は、 その生命力から「再生と発展」と「不老長寿」を象徴する動物、または神の使いとして信仰されてきました。新しい年が、巳年にふさわしい発展と健康長寿の年となり、 皆様にとって幸多い年となりますことを心からお祈り申し上げます。さて、2025年は団塊の世代のみなさんが後期高齢者となることで日本の高齢化が完成し、 長寿社会が始まる年であり、従って長寿社会を支える医療が必要になります。そこで“巳年”にちなんで、長寿社会と医療について考えてみたいと思います。
【長寿社会の医療2025年の問題】
2022年の平均寿命は女性87.6歳、男性81.5歳と、後期高齢者になる年齢75歳を超えて延伸し、長寿社会が訪れました。 一方で健康寿命(ほとんど体に支障がない状態にある年歴の上限のことです)は男性71歳、女性75歳ですから、75歳を超えて後期高齢者になるということは、 多くの方がなんらかの身体的な支障をきたすことになります。さて、現代の日本社会をリードし、 豊かな国を形作って頂いた全国で800万におられる団塊の世代のみなさんが2025年に後期高齢者となられるために後期高齢者が2200万人、 また前期高齢者が1500万人という人数の構成ができあがります。この構造は2050年まで続くことから、2025年に日本の高齢化が完成し、 また2200万人の方が健康寿命を超えますので、今後は高齢者が掛かりやすい疾患の増加が予測されます。では、高齢者がかかりやすい病気とはどのようなものかについてみてみましょう。
【長寿社会に多い病気とその対策】
歳を重ねるにつれて遺伝子であるDNAが傷つきDNAが短くなることで老化がおこります。老化した細胞は有害な物質を出し続け、まわりの健康な細胞を壊し、 免疫力の低下を起こすために長寿社会では癌が発生しやすくなり、肺炎などの感染症や心臓病が増加してきます。 特にご高齢の方には誤嚥性肺炎、腎盂腎炎などの尿路感染症、心不全、骨折が多くなりますので、免疫力を養う必要があります。 免疫力などを担う生命力を養うことを“養生”といいます。そこで高齢者の方は、しっかり養生して生命力を養い免疫力をつけましょう。 基本は過度な食欲を慎み、運動、栄養、休息を過不足なく行う生活をすることです。江戸時代に貝原益軒という医師が記した養生訓には以下のようにかかれています。
- 養生を目指すなら偏らないように食べよ。同じ味、同じ食材ばかり食べてはならぬ。
- 好物であっても「腹八分目」。1日単位で腹八分目にすれば良い。
- 夕食は早い時間に食べるのが良く、簡素にせよ。
- 養生に役立つものを食べよ。
- 宴会では細心の注意を払え。
- 夜の軽食には用心せよ。
【長寿社会に対応する当院の安心安全な医療】
養生訓は現代の老化を防ぐ生活習慣に通じます。「聖人は未病を治す」と言われ、病気がまだ起こっていない時に、あらかじめ用心すれば病気にならないのです。
その為には日頃の生活様式を改善して養生し、さらに健診や定期的な通院をして、未病の段階で治しましょう。
さて、本年も当院は「地域の命をささえる」という理念の実現に向けて確実で安全な診療・ケアを実践し、
患者さんの視点に立った良質な医療を提供できるように病院一体となって努力して参りますのでどうぞよろしくお願いします。