令和2年4月1日 院長 長谷川 純一
夏の酷暑に次いで、冬も暖冬続きで、今季も除雪車の稼動は2回のみでした。山陰のスキー場にとっては大変厳しい状況だったようですが、平地から眺める大山の雄姿も白い帽子をかぶったり、頂上付近まで地肌が見えたりと季節感の乏しい日が多かったように思います。
例年より早く、昨年末からインフルエンザの流行が顕著となっていましたが、国民的なマスク、手洗い・消毒の励行であっという間に下火となりました。一方、年末に中国武漢に端を発した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るい、前述のマスク、手洗い・消毒の徹底の元になったわけですが、感染力の強さや重症化率などで国民を恐怖に陥れることとなりました。3月14日時点で中国本土で8万人を超える感染者と3199人の死者を出す大惨事となりました。旅行者などを介して世界中に広がりましたが、わが国では、旅行者の持ち込み以上に大きな問題として、大型クルーズ客船ダイヤモンド・プリンセス号内での感染が世界的な問題を提起しました。大元はコウモリの常在ウイルスのようですが、人-人感染を起こす遺伝子変異が生じたようです。かつての重症急性呼吸器症候群SARSはコウモリのウイルスが、ハクビシンを経由して人に感染したとされ、中東呼吸器症候群MERSはラクダのコロナウイルスでした。アメリカの雑誌Scienceによると、ヨーロッパで猛威を振るっている同ウイルスには新たないくつもの変異があり、様々なルートで広がっていることがわかるのだそうです。
中国での新規発症が大幅な減少に向かい、感染の主戦場がヨーロッパ、アメリカに移った頃にやっとWHOもパンデミックと宣言したようです。当地では集会どころか学校や公共施設、飲食店の閉鎖など中国顔負けの強力な対策を講じる地方が多くなっているようです。わが国のウイルス検査態勢について大いに議論はあるようですが、大きく収束に向けて動いていくことを期待したいと思います。
当院でもCOVID-19関連で送別会や歓送迎会を中止せざるを得ず、寂しい春ではありますが、人事異動は容赦なく断行され、別れと共に新しい出会いとなりました。当院にとって得がたい人材を失う事は大きな痛手ですが、新天地でのご活躍、あるいは新しい環境でのご健勝を祈ります。また異動で仲間に加わっていただいたベテランや、新しく入職された方々には職場の環境に早く順応していただき活躍されることを期待します。
さて、当院は基本理念の下、昨年度から第4期中期計画(2019〜'23年度)を掲げ、2019年度の病院目標を「病院機能の向上を目指す」として取り組んでまいりました。おかげさまで、ある程度の成果を得ることができたと思いますが、2020年の今年度はそれを一段と推し進める意味で「病院機能の磨き上げ」としました。
まず第1点目は、国立病院機構の第4次中期計画の始めに掲げられているものと同じですが、患者目線に立った医療の提供を取り上げました。これは昨年の「医療者側の実施したい医療ではなく、患者視点から見て受けたい医療機能」とはニュアンスを異にし、「患者・家族が医療内容を理解し、主体的に治療選択にかかわることができるよう、患者家族の目線に立ったきめ細やかな支援ができる体制を整備する」という目標です。患者の治療へのアドヒアランスが高くなるよう、また電子カルテの更新や保険の改訂に合わせインフォームド・コンセントやクリニカルパスの見直しなどについても注力をお願いします。2点目は多職種連携を進め、情報共有を徹底することにより、医療安全・院内感染対策の一層の充実を図る事を目指します。当面はCOVID-19対策に釘付けになってしまう可能性がありますが、それを踏み台にして取り組んでいただきたいと思います。3点目には昨年から継続して取り組んでいただきたい事として、効率性、ポジティブ思考を基本に、更なる働き方改革を推進する事を挙げました。職務に意欲的に取り組めるよう心身をリフレッシュするためにも十分な年休取得や職務分担ができるよう職場長の配慮をよろしくお願いいたします。4点目には昨年掲げた目標を土台にして、教育・研修の機会を積極的に確保し、医療者の資質向上を図る事としました。
今年度は、電子カルテシステムの更新が大きな課題ですが、この過程において1〜4の目標達成につながる機能を盛り込んで行くことも重要と思います。医療情報部と各部門との連携をよろしくお願いいたします。
がん診療連携拠点病院再指定への課題である人的問題がクリアできるのか、医療・看護必要度など、急性期病院としての機能維持に関わる条件にうまく対応できるのか、さらに再編問題に揺れる鳥取県地域医療構想の中での米子医療センター2025プランをどの程度実現できるのかなど不透明な要素が多々ありますが、全職員がポジティブな気持ちで前向きに取り組む先に、病院機能の更なるレベルアップにつながる事を信じ、取り組んでいきたいと思います。全職員に期待すると共に、地域の皆様にも当院が一層の高次元の医療がご提供できるようご指導、ご協力をよろしくお願いいたします。
病院の中期目標、年度目標
第4期中期目標(2019〜23年)
- 専門的医療機能の充実
- 地域医療への貢献
- 業務運営の効率化
- 教育、研修、研究機能の強化
「病院機能の磨き上げ」
- 患者目線に立った医療の提供
- 安心・安全な医療の提供
- 効率的で活力ある職場環境づくり
- 教育・研修の推進