米子医療センターの方向性
明けましておめでとうございます。
国立病院機構は独立行政法人化されて丸3年が過ぎようとしています。5年後の評価時期が迫る中、米子医療センターは業績が中期目標を下回っていますので、早急な改善が求められています。
したがって、今年は正念場の年ですが、意識と組織の変革なくしては成果は出ませんので、じっくり一歩一歩、焦らず、急がず、着実に病院を運営して参りたいと思います。
鳥取県西部とくに米子市には、国が設置した鳥取大学付属病院(文部省系)、米子医療センター(厚生省系)、そして山陰労災病院(労働省系)の3病院が並立し、いずれも急性期医療を展開しています。
このような状況の中では、自院の特徴を最大限に生かし、地域の中で医療機能を分担できることが重要であります。
当院は、国立病院・療養所の再編計画の中で「がん医療」と「腎医療」を政策医療として掲げてきた経緯がありますので、この2つの医療を「当院だからこそ提供できる医療」として機能を拡大させ、地域に貢献していきたいと考えています。「がん医療」に関しては、当院は放射線治療設備を有していますので、各種がんに対して手術療法、化学療法、放射線療法、そして緩和医療が可能で、平成17年1月に地域がん診療連携拠点病院の指定を受けました。今年はその拠点病院としての機能をさらに進化させ、今月末には「がん患者サロン」を開所し、3月末には「がん相談支援センター」を立ち上げる予定で準備を進めています。また、大型医療機器として昨年9月に1.5テスラの MRIが導入され、今年中には16列の MD-CTが設置される予定です。
診断の面では有力な武器を装備することになりますので、医療レベルの向上と手術症例や放射線治療症例が増えることを願っています。
一方「腎医療」に関しては、生体腎移植の適応拡大を図り、昨年12月にはABO血液型不適合者間の腎移植にも挑戦し、移植腎生着が得られています。また、昭和58年には県内唯一の献腎移植施設に指定されていますし、県庁をはじめ関係機関の協力の下で献腎ドナーの臓器提供体制を整備し、献腎移植例の増加に繋げたいと思います。
医療スタッフの使命は安全で質の高い医療を提供することですが、良質な医療であっても提供のあり方如何によっては患者さんの信頼を失いかねません。
したがって、患者さんの満足度をあげようとする意識が重要で、「患者様は顧客であるという認識」が、実績向上のキーワードではないかと思います。古くから「脱皮しない蛇は亡びる」と言うことわざがありますが、ヘビや甲殻類は大きく成長するために「脱皮」を繰り返してきました。
また、「ヒトも太古の昔には脱皮をして若返っていた」という言い伝えが全国各地に残されています。組織を再生させ、活性化させるには、まずは脱皮することが必要です。今年の米子医療センターは、古くなった殻を脱ぎ捨てて、組織と意識の改革を進めて参りますので、よろしくお願い申し上げます。