胃がん
現状
胃がんの罹患(りかん)率と死亡率は男性のほうが女性より高く、年齢別にみると40歳未満では男女差は小さく、40歳以降にその差が開きます。
日本の胃がん死亡率の年次推移は、1960年代から男女とも大幅な減少傾向にありますが、2004年にがんで亡くなった人の数では、胃がんは男性で第2位、女性で第1位となっています。
2000年の罹患数は死亡数の約2倍です。罹患率も減少傾向にありますが、死亡率に比べて減少の度合いは緩やかです。
症状
胃は大きな臓器ですから、がんがかなり進行しても全く症状がない場合も多くみられます。しかし、一方では治療を受けている方の50%が早期胃がんで、そのうち50%は何らかの症状がきっかけで検査を受けています。
早期胃がんの多くは病変の中に潰瘍ができるので、そのための痛み、出血、胃部不快感などが検査を受けるきっかけになります。これらの症状は胃潰瘍の症状です。
進行したがんの症状は、痛みというより食事が通らない、胃が重い、体重が減る、食べ物がつかえるといったものです。知らない間に貧血が進み、そのために動悸や息切れが生じて発見されることもあります。
検査
内視鏡検査(胃カメラ)
内視鏡を使って胃粘膜を直接観察し、胃がんをはじめ胃の病変の診断を行う検査です。病変がある場合には、さらに胃の内部での病変の拡がり、がんの深さなどを診断します。胃の粘膜の一部を小さく採取し、その性状を顕微鏡で調べることを、生検と呼びます。生検が行われて初めて、がんの確定診断がつきます。
胃X線検査(胃透視)
硫酸バリウムという造影剤と、胃の中でガスを発生する発泡剤と呼ばれる顆粒を飲み、空気とバリウムで胃内の微細な凹凸や形態的変化を映し出します。
かたい台の上で身体をいろいろな方向に向けるようにしなければならない以外は、苦痛の少ない検査です。
しかし、早期癌のうち凹凸の乏しい病変は胃透視では映ってこない場合もあります。 胃癌と診断されれば胃内視鏡と胃X線検査両方の情報が必要で、他に血液検査、超音波内視鏡、転移の有無を調べるため腹部超音波、CT、胸部X線などを行います。
治療
外科的治療(手術)
大半の胃がんでは外科療法が最も有効な治療手段となっています。外科療法は、病巣を含めた胃の切除、周辺のリンパ節の徹底的な切除、食べ物の通り道の再建からなっています。
がんが進んでいて、腹膜転移などがすでにある場合、主病巣である胃袋の切除と再建だけを行う、または狭窄部位にバイパスをつくる手術が行われますが、このような手術は姑息的(こそくてき)手術と呼ばれています。これに対して、少なくとも肉眼的には完全にがんが切除できる場合に胃の切除、郭清、再建のすべてが行われるものを根治的(こんちてき)手術と呼びます。
内視鏡治療
内視鏡治療は基本的にはリンパ節転移の可能性がほとんどないがんに対して行われます。内視鏡的粘膜切除術(EMR)は、内視鏡を用いて病巣粘膜の下に生理食塩水などを注入して病変の粘膜を浮かせ、スネアと呼ばれる輪状のワイヤーを用いて粘膜を焼き切る方法です。
1980年代からこの方法が行われていましたが、1996年、内視鏡下で扱える細いナイフ(ITナイフ)が開発されてからは、粘膜の下をナイフではぎ取る方法(内視鏡的粘膜下層切開剥離術ESD)が主流になりつつあります。
抗がん剤治療
胃がんは抗がん剤に比較的反応する腫瘍ですが、まだ抗がん剤だけで胃がんを治すことはできません。胃がんに対する抗がん剤は、延命をめざす、あるいは手術を補助するもの、という認識が必要です。抗がん剤治療を行うのは
- 外科療法で切除しきれない場合
- 再発を予防する化学療法(補助化学療法)
- 手術の前に行う化学療法(術前化学療法)
などです。
受診の手順
受診科:内科(消化器)