大腸がん
現状
年齢別にみた大腸がん(結腸・直腸・肛門がん)の罹患(りかん)率は、50歳代付近から増加し始め、高齢になるほど高くなります。
大腸がんの罹患率、死亡率はともに男性のほうが女性の約2倍と高く、結腸がんより直腸がんにおいて男女差が大きい傾向があります。
男女とも罹患数は死亡数の約2倍であり、これは大腸がんの生存率が比較的高いことと関連しています。大腸がんの罹患率の年次推移は、男女とも1990年代前半までは増加し、その後は横ばい傾向です。
また、死亡率の年次推移は、男女とも戦後から1990年代半ばまで増加し、その後漸減傾向です。
症状
血便、便が細くなる、残便感、腹痛、下痢と便秘の繰り返しなど排便に関する症状が多く、これらはS状結腸や直腸に発生したがんにおきやすい症状です。
中でも血便の頻度が高く、これはがんの中心が潰瘍となり出血がおきるためです。痔と勘違いして受診が遅れることもありますので注意しましょう。
がんによる血便では肛門痛がなく、暗赤色の血液が便に混じったり、ときに黒い血塊が出るなどの特徴があります。肛門から離れた盲腸がんや上行結腸がんでは血便を自覚することは少なく、貧血症状があらわれてはじめて気がつくこともあります。
腸の内腔が狭くなりおこる腹痛や腹鳴、腹部膨満感や痛みを伴うしこりが初発症状のこともあります。ときには、嘔吐などのがんによる腸閉塞症状で発見されたり、肺や肝臓の腫瘤として大腸がんの転移が先に発見されることもあります。
検査
大腸がんの検診の代表的なものは、地域、職域で普及してきた大便の潜血反応で、食事制限なく簡単に受けられる検査です。健康な集団の中から、大腸がんの精密検査が必要な人を拾いあげる負担の少ない最も有効な検査法です。
大腸内視鏡検査(大腸ファイバー)
肛門から内視鏡(ビデオスコープ)を挿入して、直腸から盲腸までの全大腸を詳細に調べる検査です。検査は、まず内視鏡を肛門から一番奥の盲腸まで挿入して、主にスコープを抜いてくる際に十分に観察します。
もし、ポリープ等の病変を認めた場合、悪性か良性かどうかを調べるために病変の一部を採取して、どういう性状の病変かを顕微鏡で調べることもあります。また、適応があれば内視鏡的に切除(内視鏡的ポリペクトミーや内視鏡的粘膜切除術(EMR))することも可能です。
注腸造影検査
肛門からバリウムと空気を注入し、X線写真をとります。この検査でがんの正確な位置や大きさ、腸の狭さの程度などがわかります。しかし、内視鏡検査のほうが小さな病変の発見率も高いため、近年では初回検査として内視鏡検査の方が勧められています。
治療
外科的治療(手術)
大腸がんの治療は外科療法が基本で、早期がんの場合でも手術が必要になる場合があります。結腸がんの場合、切除する結腸の量が多くても、術後の機能障害はほとんどおこりません。リンパ節郭清(かくせい)と呼ばれるリンパ節の切除とともに結腸切除術が行われます。
直腸がん手術は、進行度に応じたさまざまな手術法があります。肛門に近い直腸がんや肛門にできたがんでは、人工肛門を造設する直腸切断術という手術を行わなければなりません。早期がんや進行癌のうち小さなものでは、部位によってはカメラを用いた軽い手術(腹腔鏡手術)が可能な場合もあります。
内視鏡治療
(1) 内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)
茎のあるポリープを認めた場合、スコープを通してスネアとよばれるループ状の細いワイヤー(針金)を、茎の部分に引っかけて締めて高周波電流で焼き切ります。
(2) 内視鏡的粘膜切除術(EMR)
平坦なポリープや腫瘍の場合は、ワイヤーがかかりにくいため、病変の下層部に生理食塩水などを注入して周辺の粘膜を浮き上がらせ、広い範囲の粘膜を焼き切ります。通常、外来治療を行いますが、病変が大きい場合には短期間の入院の上、内視鏡治療を行います。
良性の腫瘍や粘膜内にとどまる早期のがんは再発や転移の危険性がなく内視鏡的に治癒切除することができますが、早期がんの中でもがんがより深く進展していることが判明した場合には、リンパ節転移や再発の危険性が10%前後あるため、追加の外科手術が必要となる場合があります。
抗がん剤治療
大腸がんの化学療法は、進行がんの手術後に再発予防を目的とした補助化学療法と、根治目的の手術が不可能な進行がんまたは再発がんに対する生存期間の延長及びQOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)の向上を目的とした化学療法とがあります。
受診の手順
受診科:内科(消化器)