健やかに長生きするために
平成28年10月1日 院長 M副 隆一
記録的な暑さで幕を開けた今年の夏も、ふと空を見上げると、いわし雲が浮かび、すっかり秋模様になりました。
日本列島はどうしたのだろう。火山災害としては最悪の惨事となった御嶽山の噴火から1年もしないうちに、口永良部島では爆発的噴火により島民全員が避難を余儀なくされ、さらに箱根山、浅間山、桜島などに連鎖し、そして先月には、阿蘇山の中岳第1火口で噴火が起きました。日本のような小さな島国に、世界の活火山の7%が集まっているというのだから、火山災害は起こるべくして起こる天災だと考えざるを得ませんが、気になるのは、火山活動と地震活動との関連です。古くから両者の間には密接な関係があることが知られていますので、日本で頻発している火山活動が東日本大震災に関連した地殻変動ではないことを祈るばかりです。
さて、我が国では少子高齢社会が急速に進展していますが、10年後の2025年には、総人口の7%を占める団塊世代800万人が後期高齢者の仲間入りをすることで、いよいよ本格的な高齢社会に突入していきます。先日、2014年の日本人の平均寿命が厚生労働省より公表されましたが、それによると、女性は86.83才で3年連続の世界一、男性は80.50才で前年の4位から3位に躍進し、男性、女性ともに過去最高を更新しました。一方、時期を同じくして、アメリカのワシントン大学と東京大学などの国際チームが、世界187ヶ国の「健康寿命」を調査し、医学雑誌;ランセットに発表していますが、日本人の健康寿命は女性75.56歳、男性71.11歳で、健康寿命もまた世界で最も長いという結果でした。これら2つの報告をもとに、息を引き取るまでの「平均寿命」から自力で日常生活ができる「健康寿命」を差し引いた「要介護期間」は、男性では9年以上、女性では11年以上もあり、日本人は長く生きた分だけ病気や障害に苦しむ年数も伸びているといわれています。介護を受けることになった病態としては運動器障害が最も多く、次いで脳卒中や認知症が続き、栄養の偏った食事と高血圧が最大の危険因子であることを明らかにしました。海外では低脂肪でヘルシーともてはやされている日本食ですが、塩分が多く、精米された米飯には食物線維などの栄養素が欠けていることが問題視されているようです。ADLを低下させるロコモティブ症候群を防ぐには、若いときからの生活習慣が鍵を握っています。働き盛りの私たちも、健やかに長生きできるよう、適切な食生活や運動習慣に気を配って過ごしていきましょう。